【美亜様からの頂き物】






−胡蝶−



「けーんしん!」
「おろ?」
 突然後ろから声を掛けられ洗濯物を取り落としそうになる。
 気付くと満面の笑みの薫が後ろ手に何かを持って待ち構えていた。一瞬で何かの悪戯だろうと察して苦笑した。気付かないふりをしてなんでござるか、と返してやる。
 が。
「ねえ剣心見てみて!」
「ん?」
 とぼけた声で目を丸くする。
 薫の後ろからひょこんと顔を出したものに眉を顰めた。
 そこには。
「か、薫殿? その童は一体…」
「え? おけいがどうかした?」
 青い顔をして俺は彼女を見ていただろう。
 そこにいたのは、薫殿にうり二つの女の子だった。
 頭の高い部分で寄せられた長いめの髪に緑色のリボンがちょこんと可愛い。
   ではなく。
「その……いや薫殿、おけい…殿というのでござるか、その子は」
「え? やっだぁ剣心てば。おけいが一番懐いてるのは剣心じゃないのー!」
 いち、呼び捨てをしている。に、薫殿にそっくり。
 この構図から導かれる答えは、この”おけいちゃん”が薫殿の娘だということだ。
 だが、俺の記憶に薫殿と夫婦になった記憶も……その、一緒になった記憶もない。ということは。
(かっ隠し子!?)
 い、いかん落ち着け俺。
 従妹とか姪っ子とか。
 ふと足下に感触を覚えて裾を見下ろすと、俺の裾を引くおけい殿がいる。
「おけいは剣心が大好きねー!」
「うんかあしゃまより大好きー!」
「もう! 私が二番なのー!?」
 違う。本気で薫の子だ。
 な、なら俺は記憶喪失にでもなったのか?!
 俺の子なんだよな?
 でなくて誰  
 思いっきり狼狽しているところに薫が気配に向こうに振り返った。
 つられて俺もそちらを向く。
 からころと音がして、見慣れた女医が歩いてくるところだった。
 ほっとして息をつく。
「お、おろ恵殿……」
「あら剣さん、戻りましたわ」
「お、おろ?」
「恵さぁんお帰りなさいー!」
「おかえりなしゃーい! とうしゃまー!」
      !?
 目の前ではおけい殿を大事そうに抱きかかえる恵殿。
 頬を染めて恵殿の肩に抱きついている薫……。
「……そだ」
「剣心?」
「嘘でござるーーーーーーーーーーー!!!!!」
「剣心ってば。どうかしたの」
 どかん。
「げふっ」
 いきなり頭に受けた衝撃で目が覚めた。
 慌てて起きあがると、心配そうに眉根を寄せる薫がいる。
「……え?」
「もう、帰ってきてみたら剣心地面に倒れてるし、洗濯物に埋もれてるし。大丈夫な  
「薫殿っ恵殿だけはダメでござるよ!?」
「はあ!? 何を言って……」
「嫁になら拙者が貰うでござるから!! 何卒女色にだけはなってくださるなぁぁぁぁ!!!」
「???」
 わんわん泣く俺を慰める薫がひとり。
 弥彦が後ろにいることに俺はまるで気付いていなかった。


 数分後、「嫁」の言葉を理解した薫殿が真っ赤になって笑ったのはまた別の話。

「……いったい何の夢見たんだろうな、剣心……」






【終】

σ(^^)の目の前で書き上げ、出来立てホヤホヤをいただきました〜
この時ノートPC持参で来られた美亜様・・・出来上がったものはそのままUSBでデータ移行!
うーむ、文明の機器ってスバラシイッ

美亜様、ありがとうございます!
 




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