それは不思議な液体。
それは甘い液体。
一口食せば全身に広がる甘い蜂蜜の味。
体も心もとろけそう。



誰もがその甘さを求めている。
誰もがその蜜を求めている。



そう、まるで蜜蜂のように。




















Honey



どさ、と剣心は担いできた荷物を置いた。
塩と味噌と米。
例によってこの家の家主から頼まれたものだ。
一つ一つならさほどでもないが、全部となるとさすがに骨が折れる。

「拙者も年でござるかな・・・」

肩を揉みほぐしながら本日買ってきたものをより分けていると、玄関の方から「ただいま」という明るい声が響いてきた。
家主様のご帰宅である。
「剣心、いる〜?」
「こっちでござるよ、薫殿」
薫の呼びかけに応えてやると、ぱたぱたと軽い足音と共に彼女が姿を現した。



「あ、お買い物終わったんだ。ご苦労様」
そう言ってにっこり笑いかけられると重い荷物を担いできた疲れも一気に吹き飛んでしまうから不思議だ。



「ね、剣心。今忙しい?」
「いや、特には・・・・・何かあるのでござるか?」
「んー、何かってほどじゃないけど・・・ちょっと来てもらっていい?」
薫の表情はどこか嬉しそうだ。
それを見て悪いことではないなと直感し、剣心は薫の後に付いていった。















「ちょっと座って待ってて」
言われるままに食卓の前で座って待っていると、薫が何かを抱えて戻ってきた。
すぐ剣心に見せようとしたのだが、何かに思い当たったらしく振り向いて辺りを窺う。
誰もいないことを確認すると、後ろ手に障子を閉めた。
「薫殿?」
「あ、ごめんね。ちょっと弥彦に見つかるとうるさそうだから・・・」
そう言って、障子まで閉め切るほど用心させたものを剣心に見せた。

「おろ、蜂蜜でござるか」
「うん、妙さんからおすそ分けしてもらっちゃった。何でも知り合いの方から沢山頂いたんですって」
「左様でござるか」

とん、と薫が食卓に置いたそれは瓶に入った琥珀色の液体。
「ね、ちょっとだけ食べてみない?」
世の女子(おなご)は皆甘いものに目がないように、薫もまた甘いものが大好きだ。
目の前にある蜂蜜のとろけるような甘さを思い出して、食べてみたくなったのだろう。



「そうでござるな」
そんな薫に微笑ましい気持ちを抱きながら、剣心は封を切って瓶を開けた。
ふわりとした甘い香りが漂う。



「わぁ、おいしそう」
まずは薫が指で掬ってそのままぱくついた。
「甘ぁ〜い」
とろけそうな少女の表情を楽しげに見つめながら、剣心もまた同じように食べてみる。
普段甘いものは付き合い程度に食す程度だが、買い物で疲れた体に蜂蜜の甘さが染み渡った。
「えへへ、もう一口」
そう言って、先程より多めに掬ってまた自分の口に持っていく。
「薫殿、あまり多く取ると下に落ちてしまうでござるよ」
実際、今も口に入りきらなかった蜂蜜が薫の指から腕を伝い、着物の上に落ちそうだ。
「ほんとだ、大変」
剣心の指摘により、薫も気付いたようだ。
そのまま手拭いか懐紙で拭き取るのかと思ったのだが。










薫の舌が蜂蜜を掬い上げた。



肘から手に向かって舐め上げるその姿に剣心の心臓がどくりと音を立てた。
魅入られたように薫から視線を外せずにいると、今度は指に付いた蜂蜜を舐め始めた。










ちろちろと垣間見える赤い舌。
白い肌に付いた琥珀色の輝き。
蜂蜜を舐め取ることに専念しているため、伏せられている睫毛。










我知らず生唾を飲み込んでいた。
その飲み込む音がやけに大きく響いて少々焦ったが、薫はそれには気付かず、
「どうしたの?」
とあどけない表情でこちらを見た。



自分の行為に気付いていないのか。
いや、自分の行為がどれほど男を煽っているのか気付いていないのか。



「・・・それともそういうフリをしているだけなのでござるか?」



ぽつりと呟いた剣心に薫は首を傾げる。
「何?何か言った?」
薫の唇にはまだ蜂蜜が残っていた。
首を傾げた拍子にそれがきらりと光った。










まるで剣心を誘うように。

その誘いに剣心は乗った。










「剣心?」
隣にいる薫が剣心の顔を覗き込む。
剣心は無言で薫の唇を奪った。
「けん    !?」



反射的に逃れようとする薫の体を食卓の上で押さえつける。
柔らかな唇の感触と共に蜂蜜の味が剣心に伝わった。



無防備な薫の唇から己の舌を割り入れ、彼女の舌を捕らえる。
小鳥のさえずりと風が木々を揺らす音の他にこの場には似つかわしくないような水音が混ざった。










「ん・・・ふぁ、はっ・・・!」
いつもなら薫を気遣って浅い口付けから始めてくれるのだが、今日はいきなり呼吸を奪うほどの激しい口付け。
剣心の舌の動きが性急過ぎてついていけず、涙が滲む。
たちまち剣心に翻弄され、薫は抵抗する力を奪われた。










全身の力が抜けたことを認め、剣心はほくそ笑んだ。
薫の舌と絡ませあいながら、素早く彼女の体を隠す邪魔な衣(ころも)を剥がしていった。
現状を察知してもがくが、食卓に縫い付けられた薫は何も出来ない。

ふと蜂蜜の瓶が剣心の視界に入り、何か思いついたかのように彼の目が愉しげに細められる。

剣心は開けられたままの瓶の中に自分の手を差し入れて蜂蜜を掬い、薫の肌の上に落とした。
「んふぅ!?」
ひやりとした感触に、薫の体がびくりと震えた。
そのまま滅茶苦茶に手を動かすと、
「んんッ、ん〜〜〜!!」
ぬるりとした感触で感じてしまったのか、薫の喘ぐ声が聞こえた。
口腔内で蜂蜜と薫の甘さを堪能すると、剣心は唇を離し、少し体を浮かせて薫の全身を見下ろした。



輝く裸身。



その揶揄(やゆ)は決して間違ってはいない。
食卓の上であられもない姿を晒している薫の裸身は確かに光り輝いていた。
障子から差し込む薄い光を受けて、薫が荒い呼吸を繰り返すたびにその輝きも変化する。










剣心は薫の手を持ち上げ、それを丹念に舐め上げる。
一心不乱に舐め続ける様は、童(わらべ)が飴玉を頬張るよう。










ぴちゃぴちゃとわざと音をたてながら薫の指を舐めていると、
「や・・・剣心・・・」
部屋に響き渡る卑猥な水音に耐え切れずに薫が哀願する。
「どうして?まだ蜂蜜は残っているでござろう?体に着いたままでは薫殿も気持ち悪いのではござらんか」



しかし、言っていることとやっていることは全く別のこと。
まだ中身の残っている瓶の中に手を突っ込むと、どろりとした琥珀色の液体が彼の指に纏わりついた。



「それに、薫殿も欲しいのでござろう?」
そう言いつつ、蜂蜜を薫の体に塗りたくる。
「拙者もまだ味わい足りない」
何か言おうとして開きかけた薫の口に蜂蜜にまみれた己の指を差し入れた。
「はむっ」
「ほら、甘いでござろう?」
声を出すこともままならぬ薫は、ただ剣心の指を舐めることしかできなかった。

確かに甘い。
しかしそれは蜂蜜の味だけだろうか?

その甘さを一片も残さぬように、薫の舌は一心不乱に剣心の指を舐め続ける。
くすぐるような舌の愛撫を受け、剣心の口元が妖しく歪んだ。
「折角頂いた蜂蜜・・・薫殿ももっとよく味わって食さねば」
指は薫にくわえさせたまま、剣心は女の象徴に視線を移す。
その頂に狙いを定め、迷わず食らいつくと、
「んあッ」
薫が驚いて口を開けた。
その拍子に剣心の指が開放され、彼女の体を逃さぬようにその肩をがっちり掴んで固定する。
「本当に甘い・・・今の薫殿はさしずめ蜜に包まれた菓子でござるな」
固定する力はそのままに、肩を掴んでいた手を移動させると、ぬるりとした蜂蜜が剣心の手を滑らせる。
その感触が薫の奥底にある欲情を刺激した。
「!!・・・やぁ・・・こん、な・・・ッ」
堪らず体を捩(よじ)っても、剣心の手がそれを許さない。










剣心の手が薫の肌の上を滑っていく。
ぬるぬるとした蜂蜜は、まさに潤滑油。










剣心は一時も手を離すことなく、薫の体の曲線をなぞっていった。
「っ・・・ふ、あぁ!」
ただ撫で上げているだけなのだが、いまだかつてない愛撫に薫の思考は白く染まりつつあった。
薫の裸体に輝く蜂蜜を舌で綺麗に舐め取りながら、剣心の手がもう片方の乳房に到達する。
少し強めに握ると、くちゃり、という音と共に薫の乳房が形を変えた。
「はぁ・・・ふ、ぅん!・・・・・や、何か変な感じ・・・」



掴まれているのだが痛みは感じない。
感じるのはぬるぬると己の胸を揉みしだく不思議な感覚。
そして剣心の指の間から溢れる蜂蜜が、くちゃ、くちゅ、という淫らな音を薫の耳に届け、それが余計に官能を呼び込む。



だから、剣心の手が己の下腹部に移動していることにも気付かなかった。
彼の細い指が薫の叢(くさむら)に触れると、
「あ、駄目!!」
慌てて両足をきつく閉じるが、今回に限りそれは全く効果が無かった。
「つるつる滑っていくでござるな」

剣心の言うとおり、蜂蜜によって滑りやすくなった足の間に指を滑らせただけで、するりと秘所に辿り着く。

「今度からこうやって蜂蜜を使うのも悪くない」
くすりと笑って薫の耳元で囁くと、
「ばか、何言って・・・ああんっ!!」
いくら薫が足を閉じていようが、すでに秘所に潜り込んだ男の指には何の意味もなさない。
あっという間に快楽の渦に引きずり込まれた。
「あ・・・はッ!ちょ・・・待・・・ってぇ・・・」
剣心の指が花芯に辿り着いた。
固くなっているそれにそっと触れると、
「ツ・・・・っ」

僅かに薫の表情が歪んだのを認め、剣心は指の動きを止めた。

「薫殿、痛い?」
気遣わしげに薫の顔を覗き込むと、
「ん・・・少し・・・」
火照った体を落ち着かせようと何度も呼吸を繰り返しながら薫が答えた。
汗ばんだ頬に張り付いた黒髪を払ってやり、そっと唇を寄せると、潤んだ瞳で薫がうっすらと微笑んだ。










今までの剣心の愛撫によって、花芯が固くなりすぎているのかもしれない。










「すまない、薫殿。少し刺激が強すぎたようでござるな」
剣心の言葉に、首を横に振った。
「大丈夫よ、剣心。謝らないで」
すっかり正気を取り戻した薫を見ながら、いまだに己の指が彼女の中にあることに気付いた。
ずるり、と指を引き抜くと、
「んっ」
一瞬だけ薫の眉が切なげに寄せられた。
しかしそれはすぐに消え、代わりに彼女の頬が赤く染まる。
「やだ、剣心ッ」
目を背ける薫に怪訝そうな表情を作り、ふと自分の指を見てみると愛液がべっとりと指に絡まっている。
「何か拭くもの・・・」



薫が懐紙を探すために身を起こしかけて       動きが停止した。



何と、剣心は指に付いた愛液を舐め始めたではないか。
先ほど薫が自分の指に付いた蜂蜜を舐め取ったように、剣心も愛液の付いた指を自分の口に含んでいる。
「ちょっと剣心、何しているのよ!?」
仰天して上肢を起こし、彼の行為を止めようとするが、剣心はそんな薫におかまいなく愛液を舐め続けている。

「剣心、やめて!」
「なぜ?」
「なぜって・・・その、汚いし・・・」

段々声が小さくなり、終いには赤面して俯いてしまった薫を楽しそうに見ている。
「汚くはござらんよ。これも薫殿でござるから」
と、これ見よがしにぺろんと舐め上げた。
薫から視線を離さず、まるで見せ付けるかのようにゆっくりと、丁寧にその行為を続けている。
艶めいた表情に変わった剣心に薫の体がぞくりと震えたが、それでも何とか彼の行為を止めさせたくてか細い声で哀願する。
「お願いだから・・・もうやめて・・・」



赤面し、羞恥のために身を竦ませる薫の姿は、剣心の情欲を煽るのに十分だった。
剣心の瞳が妖艶な光を放つ。



    では、直接頂きたい」
「え?」
言われたことを理解できず、きょとんとして剣心を見る。
静かに微笑んで瞳の奥にある邪な光を隠し、剣心は続けた。










「薫殿の持つ蜜を、直接頂きたいと言っているのでござるよ」










これでもかというくらいに薫の瞳が大きく見開かれる。
何か言い出そうと口を開きかけたが、それは声にならなかった。
声を発する前に、剣心によって唇を塞がれたからだ。
「ふ!?」
薫の思考を封じるかのごとく、剣心の舌があっと言う間に彼女の舌を捕らえ、絡まりあう。
再び食卓の上に縫い付けられたかと思えば、剣心は己の片足を彼女の股の間に差し入れて薫が両足を閉じることが出来ないようにした。
そのまま唇を離し、薫の体に残る蜂蜜を舐め取りながら徐々に顔を目指す場所に移動させていく。



「だ、駄目ッ」
僅かに残った理性で剣心を制止しようとするがもう遅い。



「ああ・・・もうこんなになってしまって」
見れば薫の実は赤く熟しており、剣心が来るのを今か今かと待ち構えている。
まずは挨拶代わりに軽く息を吹きかけると、
     !!」
それだけで薫の体が跳ね、食卓ががたんと鳴った。
剣心の顔が満足げに歪み、舌でその実を撫でるように舐め始めた。
「あっ、いや!剣心、やめてぇッ」
拒絶するように声を上げても、剣心の耳には続きをねだる女の嬌声にしか聞こえない。

「はぁん、い・・・ぁあああッッ」

欲望の赴くままに薫を責めたてると、新たな蜜が溢れ出してきた。
それを一滴も零すまいと、今度は溢れ出る蜜を舐め取る。
ぴちゃぴちゃといやらしい音を響かせているが、快楽の渦中にある薫の耳にその音は届かない。
愛液を舐め取りながらも、剣心の舌は薫を思うままに蹂躙している。










己の愛撫によって艶を得る薫の体。
とめどなく溢れ出る快楽の証である愛液。
そして己の欲望を煽る女の嬌声。

この甘さに勝るものはない。










「あっ、やぁ・・・ああぁぁぁッ!!!!」
堪えきれず薫が達した。
がくがくと震える尻を支えてやり、ちう、と音を立てて蜜をすすってから剣心は薫を見下ろした。
達したばかりで虚ろな瞳で宙を見上げている。
それを見て、剣心は眉をひそめた。



今の薫に、自分の姿は映っていない。



ふ、と悪魔のように冷たく笑った。










ならば無理矢理にでも彼女の瞳に己を映すまで。










乱れた着物を乱暴に脱ぎ捨て、剣心もまた生まれたままの姿になった。
そして薫に覆いかぶさり、自身を彼女の中に沈め始めた。
新たに挿入された異物を感じ、いまだ快楽の余韻に浸っていた薫を無理矢理引き戻す。
「あ・・・けん、しん?」
「まだ拙者は満足していないでござるよ、薫殿」
「え?・・・・あ、きゃんッ」



彼女に考える暇(いとま)を与えず、剣心は自身を全て挿入させると腰を動かし始めた。



「ふぁ・・・ああっ!!けん、し・・・お願い、ま・・・やあぁぁぁ!!!」
「待てぬよ。もう拙者も抑えが利かない・・・そうしたのは薫殿でござるよ?」
「何言っ・・・はぁ、いや・・・ん・・・んんぅッ」
激しい律動に耐えかねて、縋りつくようにして男の背中にしがみつく。
その間にも剣心が薫を深く突き上げ、更なる高みに誘う。
「あ・・・?や、もう・・・くぅ・・・」
「うぁ・・・かおる、ど、の・・・ッ」










「あ       !!!!!」

己の体内に熱い蜜が注ぎ込まれるのを感じた瞬間、薫の意識が白く染まった。




















「・・・か、お・・・くッ」
全ての蜜を放った剣心は、少女の上に倒れこんだ。

胸に顔を埋めると蜂蜜のほのかな香りと、薫の匂いが鼻腔をくすぐった。
そして耳に届くのは意識を手放した彼女の鼓動。

自分の呼吸を整えてゆっくり体を起こすと、両目を閉じた薫の顔があった。
視線をめぐらすと、半分以上減ってしまった蜂蜜の瓶が目に入る。
剣心はほんの少しだけ蜂蜜を指に乗せ、それを薫の唇に塗った。
紅を塗った時とは違うその表情を満足気に見つめてから、そっと唇を合わせる。
角度を変えながら何度も啄ばんでから唇を離すと、自身の唇にも蜂蜜が付着している。
それを舌で舐めとり、ちょっと首を傾げて独り言のようにこうつぶやいた。



「・・・・・やはり、薫殿の方が甘いな」






【終】



サイト開設してから何となく書いた裏モノ。
たまにはこういうのもいいかなと思いまして。
でも書いたきりUPもせず、
「いつ出そうかな〜、どうしようかな〜」
なんてうろうろ考えているうちに気付いたら二年もたっていました(笑)
さすがにこれ以上放置したらσ(^◇^;)が忘れそうだと危機感を感じ、
「甘いものだからバレンタインでいいや!」
と超適当な考えのもとお披露目となりました。

今回手直しで改めて読み返してみると・・・ああ、何でこんなもん書いちまったんだ(滝汗)
何か違うプレイをさせたかったんでしょうか←他人事

直接的な道具を使わせるのは書いているこっちが無理!
そんなのできなーい!!(ノ><)ノヒィ

・・・とまともな発言(?)をしてみましたが、考えてみたら蜂蜜を体に塗りたくってヤルってのも考えてみたらかなりアレじゃないのorz