【剣心×薫】




「このくらい平気だってば!恥ずかしいから下ろしてよ〜」

「妙な捻(ひね)り方をしたのでござろう?あまり動かしてはならぬよ。
大丈夫、なるべく人がいない道を行くから」

「それじゃ遠回りじゃない。剣心が疲れちゃう」

「おろ、拙者は全然構わぬが」

「私が構うの!それに私・・・お、重いし・・・」

「ほぅ、薫殿でも気にするのでござるなぁ」

「何よ、その『薫殿でも』って!!」

「い、いや特に深い意味は・・・」

「どうせ私は女らしくないわよ!」

「薫殿が気にするほど重くはござらんよ」

「今更言っても遅いッ」

「・・・・本当のことでござるが・・・すまぬ、拙者は言葉が足りぬゆえ」

「・・・別にいいわよ。剣心が気障(きざ)な台詞吐いたら逆に笑っちゃうし」

「笑・・・そ、そんなに似合わないでござるか?」

「自分で想像してみれば?」

「う・・・・・」

「うふふ、無理しなくてもいいわよ。
さっきのだって、悪気があって言ったわけじゃないでしょ?」

「どうもうまい言葉が見当たらなくて・・・薫殿の気分を悪くしてすまなかった」

「だーかーら、もういいんだってば」

「気障な言葉も薫殿が喜びそうな言葉も言えないが、嘘だけは言わぬよ」

「え?」

「だから、薫殿が重くないということ・・・羽のように軽いでござるよ」

「そ、それももういいってばッ」

「強いて言うならもそっとむっちりしていたほうが拙者は嬉しいのでござるが」

「正 直 に 言 い す ぎ !」










【弥彦×燕】



「・・・・・あの、弥彦君?」

「何だよ」

「私一人で歩けるから、もういいよ?」

「赤べこに着いたら下ろしてやるよ」

「こんなの怪我のうちに入らないよ・・・それに、弥彦君の手ぬぐいが汚れちゃう」

「汚れただけなら洗えば落ちる。破いたらもう手ぬぐいとして使えねえだろうが」

「それはそうだけど・・・あ、あの、重いでしょ?」

「別に」

「・・・」

「・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「や、弥彦君・・・?」

「今度は何だ」

「やっぱり下ろして?」

「くどいぞ」

「だって、辛そうだし」

「何が」

「・・・・・息、切れてない?」

「・・・・・気のせいだろ」

「・・・・・・・・・・でも」

「うるせえ!!気のせいだって言ったら気のせいなんだよ!
いいから黙って背負われてろよッ」

「ご、ごめんなさい〜っ」

「謝るくらいならしっかり掴まってろ!!」










【左之助×恵】



「医者のくせに不注意で足を挫くとはねぇ」

「憎まれ口はいいからさっさと歩く!
医者だって人間なんだからこういうことだってあるわよ!」

「背負われている奴がずいぶんでかい態度じゃねえか」

「誰も背負ってくれなんて頼んでないでしょ?
私はいいって言ったのにあんたが勝手にこうしてるんじゃない」

「かー!可愛くねえ女」

「可愛くなくて結構よ!
そもそも、あんたに『可愛い女』呼ばわりされても全っ然嬉しくないから」

「口の減らねえ奴・・・ところでこのまま行けば診療所だが、今日はもう往診はねえのかよ」

「え?ええ、あとは診療所で後片付けすれば今日はもうおしまい」

「お前・・・人が怪我したときにはおとなしくしてろって言うくせに・・・」

「あんたは無茶しすぎなのよッ」

「しょうがねえ、最後まで付き合ってやらぁ」

「は?別にいいわよ」

「それで悪化したら往診に行けねえだろうが」

「だからって・・・・」

「そんかし飯は大盛りな。当然おかわり自由で」

「あんたって人は・・・・ッ」

「何だよ。こちとら口うるさい女狐背負って疲れてんだ。そのくらいいいじゃねえか」

「・・・・喧嘩売ってんの?」







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