イトシイヒト  【後編】









「剣心?」



折角やる気になったところに剣心から待ったをかけられ、やや拍子抜けした薫が訝しげに首を傾げる。
薫の中にあった恐怖心はとうの昔に消えていた。
剣心は何度か深呼吸を繰り返して何とか欲情を宥め、薫と向き合った。
「・・・やっぱり、私のやり方が悪かったの?」

おずおずと切り出す薫に、剣心はとんでもない、と首を振る。

「薫殿のやり方が悪かったなどと、そんなことはないでござるよ。むしろ・・・良すぎて達してしまうところでござった」
「達し・・・!?」
ここにきてやっと剣心が薫の手を止めた理由が分かった。
「やだ、私・・・・・」
薫は夢中になって剣心の分身を撫でさすっていたことを思い出し、あまりの恥ずかしさに視界が滲む。










私・・・・・何てはしたない真似を・・・・・










もうまともに剣心の顔を見ることが出来ず、くるりと背中を向けてそのまま押し黙ってしまった。
そんな薫を、剣心は背後から包み込むようにして抱きしめた。



「薫殿・・・恥ずかしがることなど何もないでござるよ。現に拙者は嬉しかった」
「う、嬉しい?」



涙声で答える薫の耳元で、ああ、と囁く。
「拙者は薫殿に愛してもらって、本当に嬉しかった。だから、今度は拙者が薫殿を愛したい」
「剣心       あ」
剣心の手が薫の胸の膨らみに伸び、その感触を楽しむかのようにゆっくりと撫でた。



最初は弱く、段々力を加え。



その力に比例するように、薫の声が甘く響く。
「ん・・・あぁ・・・っ」
その間にも、剣心は彼女の柔らかな耳朶を軽く噛み、黒髪に顔を埋めそこに隠れている白いうなじにも赤い華を咲かせた。
やがて、剣心の指が乳房の先端を摘み上げた。

「や・・・剣心っ」

その手から逃れようと、薫の腰が浮かび上がる。
だが、背後の剣心に圧し掛かられるような形で、二人して夜具に倒れこんだ。
「きゃんっ」
すぐ起き上がろうとしても、剣心によって押さえ込まれた薫は身動きすら出来ない。
それをいいことに、剣心の手がそろそろと下降していく。



彼女の抗議の声を上げさせまいと素早く叢(くさむら)を掻き分け、まだ誰も触れたことのない秘所に触れると、愛液が溢れ出し剣心の指を濡らす。










よく潤っている。それだけ感じてくれたのだろう。










にやりと剣心の口角が上がった。
「薫殿・・・薫殿のここ、よく濡れているでござるよ」
「やぁ・・・言わないで・・・」
「恥じることなどない。よく濡れているというのは、ほら       
剣心の指が蜜壷に滑り込んだ。



くちゅ・・・



「はぁっ!」
瞬間、薫の体がビクリと大きく震えた。
そんな薫を逃すまいと強く抱きすくめ、更に指を沈めた。
生娘の膣内だけあって、少々きついが、溢れる愛液のおかげで思っていたより、するりと入り込むことが出来た。
「んんっ!」
「薫殿の蜜が導いてくれる・・・拙者を待っていてくれたようでござるな」



何度か指を抜き差ししつつ、蜜壷の中で剣心の指が彷徨う。



「あ!・・・ふ・・・」
一際甲高い自分の声に気付いた薫が慌てて己の口を押さえた。
「薫殿・・・声、聞かせて?」

耳元で囁く剣心の声はいつの間にか艶めいていた。

その声にどきりと胸が高鳴るが、口を押さえる両手が外されることはなかった。
仕方ない、という風に一つ息を吐き出し、今まで薫の乳房を弄んでいた手で彼女の両腕を掴んだ。
「やっ、剣心!」
片手だけであっさりと己の両手を封じられ、もがいても剣心の手から逃れることが出来ない。
華奢(きゃしゃ)な腕なのに意外と力強くて、振りほどこうとしてもびくともしなかった。










「聞かせてほしいのでござるよ、薫殿の声を」
「そんなこと言われたって・・・あぁッ」










剣心の指が蜜壷の奥に隠れていた蕾に触れると、薫の体に甘い衝撃が走った。



「んんっ・・・やぁ!もう、やめ・・・」
「やめてほしい?でも、薫殿のここはまだ触って欲しいみたいでござるな」

言いながら、剣心は指をもう一本入れ、更に動きを増やすと、彼の指が卑猥な水音を奏でる。

「ふ・・・アアッ!!!」
たまらず薫が喘いだ。










部屋に響き渡るのは少女の嬌声か、それとも蜜壷を泳ぐ指の水音か。










       ずぷ、と剣心が蜜壷から指を抜き、薫の体を解放した。



「はぁ・・・剣心?」
剣心から与えられる快楽に翻弄され、虚ろな瞳で彼を見れば、真剣な表情で己を見つめる一人の『男』と出会う。










「薫殿」










剣心は薫に覆いかぶさる形になり、まっすぐ彼女を見つめている。
その熱のこもった瞳で、薫は彼が何を求めているのか悟った。



薫は言葉を発する代わりに笑みを浮かべて頷いた。
剣心もまた、薫に不安を与えぬように微笑を返し、彼女の唇に口付けを落とす。
そして、なるべく薫の体に負担をかけぬよう、ゆっくりと自身を彼女の中に沈めていった。

「・・・・・!」

予想以上の苦痛に、薫の口から声にならぬ悲鳴が生じた。
「薫殿・・・痛かったら言って?」
「だ、大丈夫・・・」



なんとか笑顔を作り返事を返すが、正直なところ、薫自身この痛みに耐えられるかどうか自信がなくなってきた。
だが、それ以上にこれで剣心と一つになれるという想いが薫の心を占めていた。










今だけ我慢すれば、剣心と       










剣心もまた、一刻も早く薫の中に入りたかった。
しかし、苦痛に歪む薫の顔を見るのは極力避けたい。
そんな考えから、どうしても行動が慎重になってしまうのは否めない。



「けん、し・・・」
「すまない薫殿、もうちょっと・・・」



どこか堪えるような剣心の声に、剣心も痛いのかしら、などと的外れなことを考えてしまう。
しかし、痛いのは自分も同じ。
「もうちょっと」と言った剣心の言葉にかなり落胆した自分がいる。
この状況を打開すべく、薫は思い切ったことを口にした。










「剣心、私は大丈夫だから手加減しないで!」
「か、薫殿!?」










これには剣心もたまげた。
薫の気が強いのは以前から承知していたが、まさかこんな時にまで・・・



「薫殿?確かに今の痛みは相当なものかも知れんが、もう少しだけ我慢してもらえば全部入るでござるよ」
「痛みなんてどうでもいいのよ!」



澄んだ瞳で己を見返す薫の表情は意地を張っているわけではなさそうだ。
薫の真意が分からず、剣心は彼女の瞳を見つめ返すことしか出来ない。
と、その薫の瞳が切なげに揺れ、次の瞬間、彼女はこう言った。










「・・・私を貴方だけのものにしてほしい・・・」










痛いのは事実だが、少しでも早く剣心のものになってしまいたかった。










「かお       
予想外の言葉に剣心は言葉を失った。
「だからお願い!一気に奪って!」
そう言って、薫は無意識のうちに逃げないように、しっかりと敷布を握り締めた。
剣心は少し躊躇していたが、薫の意志が固いことを悟ると、
       分かった」
と言って、彼女の体を抱きしめた。



「薫殿、拙者の体にしがみついて」
耳元で囁くと、遠慮がちに薫の腕が剣心の背中に回される。
「もっと強く」



己の体の下で、薫の身が固くなったのを感じたが、剣心の確たる口調に従ったほうがいいと判断したのだろう。
回された腕に力がこもり、薫がしっかりしがみついたことを確認すると、最後にもう一度だけ確認した。

「薫殿       本当に良いのでござるな?」

こくん、と薫が頷くのが分かった。
剣心は大きく息を吐き出し、彼もまた、薫を抱きしめる腕に力を込めた。



「いくでござるよ」










その言葉が薫の耳に届くと同時に、剣心が一気に薫を貫いた!










「はうッッッ」



痛みよりもまず、唐突に異物が侵入したことに対する圧迫感のほうが強く、薫の口から息が漏れる。
強烈な痛みに耐え切れず、力を失った薫の腕がずるりと剣心の体から滑り落ちた。



圧迫感を感じているのは剣心とて同じこと。
処女の狭い膣内に無理矢理侵入したのだ。
剣心の欲望を排除するかのように、きゅう、ときつく締め上げる。

「は・・・ッ」

自身を締め上げるその感触は決して痛みだけではない。
思わず熱い吐息を漏らしたが、この感触を楽しむ前にまず、己の数倍もの痛みに襲われている薫に意識を向ける。



「薫殿・・・大丈夫でござるか?」










あまりの激痛に声も出ないのか、薫は瞳を閉じたまま顔をしかめ、こくこくと頷くことしか出来ない。
薫の額に浮いた玉のような汗を己の手で拭い、破瓜(はか)の痛みを和らげるように何度も何度も彼女の髪を梳いた。










「痛みを逃がすように・・・ゆっくりと呼吸を繰り返して・・・」



剣心の言葉を実践しているうちに、薫も段々落ち着いてきたようで、うっすらと瞳を開けた。
「薫殿?」
「・・・大丈夫・・・」
だが、その瞳は焦点が合っておらず、些(いささ)か心もとない。










今夜はやめたほうがいいやもしれぬ。










虚ろな瞳で、体に力が入らなくなっている薫にこれ以上無理はさせたくなかった。
己の欲望は、厠(かわや)にでも駆け込んで何とかすればいいだけのこと。



・・・・・あまりにも情けない図ではあるが、それでも薫に無理をさせるよりずっといい。



「薫殿、今夜はもう       
そこまで言って絶句した。










薫は泣いていた。










透明な雫をはらはらとこぼし、時折しゃくりあげてはそれを止めるかのように両手で口を押さえて。
「薫殿!?やはりまだ痛みが       
慌てて自身を引き抜こうとする剣心を制するように薫はふるる、と首を振った。
「ごめんね、そうじゃないの。ごめん・・・・・」



はあ、と息を吐き出し涙を止めると、まだ濡れている瞳で剣心を見上げた。



「私・・・剣心と一つになったのよね」
薫の右手が己の下腹部に添えられた。
「ふふ、ここに剣心がいるってちゃんと分かるわ・・・」
そちらに視線を向けたかと思うと、すぐにまた剣心を見つめる。










「これで私は・・・・・貴方のもの、ね・・・?」










濡れた唇が妖艶に歪む。
そこにいるのは日頃勇ましく剣を振るう神谷活心流の師範代ではなかった。










己の目の前にいるのはたった今『女』となった神谷薫という『華』。




















そして、その『華』を開花させたのは間違いなく       この俺。




















瞬間、剣心の中で何かが弾けた。
       薫!」
剣心は己の欲望を叩きつけるように薫の蜜壷に深く沈めた。



「ふっ・・・・んぅ!?」
「はぁ、薫ッ」



突然のことに何が起きたのか把握できない。
分かったのは己の体を駆け巡る無数の痛みと、狂ったように己の名を呼び続ける愛しい男の声。

「薫、薫・・・・・俺の薫ッッ」

薫の唇を貪り、形が崩れるほどに乳房を揉みしだき、噛み切らんばかりにその肌に吸い付いた。
その間にも剣心の欲望が何度も薫を貫く。
獣に食われているような錯覚すら覚えるそんな乱暴な抱き方に、薫は唇を真一文字に引き結びひたすら耐えた。
己にのしかかる男に抵抗もせず、苦痛の声もあげずにただ受け入れていたのは、剣心が薫を求めていたからだ。



剣心が己の名を呼び、己を欲している       理由はそれだけで十分だった。










「薫ぅ・・・・・俺も・・・俺も、君のものだから!!」










切なげに発せられた男の言葉に、つぅ、と薫の頬を一筋の涙が伝った。
それは恐怖や苦痛からくる涙ではなく       歓喜の涙。










「けん・・・剣、心ッ」










思わず手を差し伸べると、その先に触れたのは汗に濡れた剣心の赤い髪。
薫は迷うことなく彼の首筋にしがみついた。




















痛みがやがて快感に変わる頃にはもう、薫の意識は朦朧としており、己の体に感じる刺激が苦痛なのか快楽なのか分からなくなっていた。
ただ分かるのは愛しい男の確かな体温。



「・・・おやすみ、薫殿」



獲物を満足ゆくまで味わった獣はもとの人間の姿に戻った。
耳元で剣心が甘く囁き、額に彼の唇が触れる。










剣心・・・・・私の剣心・・・・・










薫のよく知る剣心がそこにいることに安堵し、彼女は意識を手放した。
剣心も眠りに落ちた薫を己の胸に抱き、彼女の黒髪を手で梳いた。
温もりが届かぬその冷えた黒髪が、火照った体にちょうどいい。



「薫」



もう一度だけ名前を呼んで、剣心もまた、少女の温もりを感じながら眠りに落ちた。




















私は貴方のもの。
君は俺のもの。



貴方は私のもの。
俺は君のもの。



貴方は私の。
君は俺の。










       イトシイヒト。










【終】

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こ、これで勘弁してくだせぇッ
具体的な描写とかよく分からないし・・・過激な裏がお好みの方、申し訳ありませんm(_ _)m

だって、恥ずかしいんだもん(赤面)

改めて読み返してみると、ほんっとうに恥ずかしいんですよッ
あ、でも最後の部分、獣になった緋村さん、結構お気に入り←問題発言
やさしい男って言うのは認める。
だけど、やっぱり彼は『男』であったと!
うら若き乙女に欲情することもあれば、それが爆発することだってあると!
それもまた、人間だよな、としみじみ思う今日この頃・・・( ー_ー)旦~